取引先のAさんは、何も分かっていない人だから気をつけた方がいいよ。
先輩からそんなアドバイスをもらった。
新しく始めたプロジェクトの窓口担当者がAさんだった。
先輩からのアドバイスがあったので、身構えていたのだ。
「何も分かっていない」ってどんな人なんだろう。
先輩が言うには、トンチンカンな質問ばかりしてくるんだとか。
「要は理解していないってことだよ」とも言っていた。
窓口担当者になったAさんと、実際にやり取りを始めた。
今までの担当者より質問が多いし、細かなところまで確認してくる。
だからといって、トンチンカンな質問ではない。
逆に細かなところは、間違っていると思いますよ、なんて指導される。
実際に僕が間違えていたところだ。
そのやり取りが1ヶ月、2ヶ月となったときに気付いたことがあった。
それは、トンチンカンなのはAさんではなく先輩だった、ということだ。
先輩が担当しているAさんの案件。
先輩はその分野に全く詳しくない人だったのだ。
だから、先輩の説明があまりにもイケていないので、Aさんがトンチンカンな質問をしてしまうのだった。
自分では完璧にできていると思っている先輩が、抜け穴だらけだったとき。
「なんでオレの説明を分かってくれないんだろう、まだまだAさんも理解が足りないな」なんて考えていたら。
いつまで経っても、前に進んでいかない。
挙げ句の果てに「Aさんは何も分かっていないヤツだ」なんて発言してしまう。
新型コロナウイルス感染症の影響で、在宅ワークになった。
先輩ともチャットでやり取りをするのだけれど。あまりにも言っていることが分からない。主語述語の関係がめちゃくちゃなこともある。話のゴールがガラリと変わることもある。
会って話すと全く普通の人なのに、どうやらテキストコミュニケーションが苦手みたいだ。
だから今まで全く気付かなかった。
原因は先輩にあったのだ。
社内の人、身内の人だから、自然とその言葉を受け入れてしまう。
実際はどうなのか、なんて吟味することもなかった。
明らかに問題は別のところにあったのだ。
言われたことを、100%そのまま素直に受けて入れてしまうのは危険だ。
きちっと判断できる材料を。
自分の経験を踏まえて、改めて考えないといけない。そんな風に気付かせてくれたのだ。