目の前が真っ暗になるとき、じっとしていられなくなる。
右に左に、動物園の熊のように。
うわ、どうしよう。
なんて、そんな気持ちになる。
でも、目の前が真っ暗になるときは、一瞬にして真っ暗になるわけじゃない。
そこから、じわりじわりと、暗闇に向かって進み出すのだ。
本当に真っ暗になるのであれば、「目の前が真っ暗だ」なんて考えられなくなる。
例えばクビだと言われたとき。
クビだと言われた瞬間、目の前は真っ暗になるけれど、それよりも怖いのは次の仕事が決まるかどうか、蓄えはあるだろうか、と、少し先のことを考え出す。
このまま仕事が決まらず、来月の支払いもままならないような状況が見えてきたら、もうどうしていいか分からなくなる。
目の前が真っ暗になったその日から、じわりじわりと真綿で首を締められているように。
あとからじわりじわりと重く、身体にのしかかるそれを、どれだけクリアに片付けられるか。
目の前が真っ暗になった瞬間なんて、V字回復のタイミングなのかもしれない。
それよりも少し先に、本当に真っ暗な日が待っているのだから。