先日、プロの写真家の話を聞く機会があった。
スタジオで物撮りをすることを得意としている写真家さんだった。
プリンタのカタログに載っている写真、焼き物のカタログ写真、通販の商品写真、スーパーに並んでいる食品のパッケージ写真などを撮影しているという。
その方の話を聞いて、ふと感じたことは「ガンコ親父はデジタル化の遺産」だということだった。
ここ20年のデジタル化
パソコンが各家庭に広まりだして、どれくらいたっただろうか。
ウィンドウズ95が発売されたのは20年以上も前。
ここ20年でデジタル化が一気に進んだように思う。
携帯電話やスマホが普及し、カセットテープやCDで聴いていたポータブルプレーヤーなんてもう見かけない。
MDプレーヤーだって懐かしいものになる。
ブラウン管のテレビは薄型液晶テレビになり、ビデオテープも見かけなくなった。
ここ20年の変化は著しいものだった。
例えば写真の世界
それは写真の世界でも同じで、フィルムで撮影していたものがデジタルになった。
デジタルカメラが登場した当時は、ニュースや報道の現場で使われることが多かったが、広告やデザインの場ではまだまだフィルムが多かった。
いつの間にかデジタルカメラに変わり、フィルムで撮影することもなくなった。
撮影したものも、すぐに見ることができるようになった。
1つ1つの真剣さが変わった
ここで大きく変わったのは、被写体に対する真剣さだと思っている。
その場で確認できる安心感、一緒に見てもらうことでの安心感。
安心感のおかげで、この1枚にかける真剣さが徐々に変わってきた。
コストに対する安心感もそうだ。
一般的なカメラであれば、数を多くとるなら36枚撮りフィルムが主流だった。
フィルムそのもののコスト、それを現像するためのコスト。
仮にフィルムは1本800円、のフィルム、現増代が800円とした場合、1回シャッターを切るごとに44円かかる。
現像した後は、そのフィルムをスキャニングするか、紙焼きして取り込む。
その手間がない分、気軽にシャッターを押せるようになった。
精度がゆるくなっていく
デジタルであれば、コストはうんと安くなります。
カメラのシャッターやバッテリーは消耗品なので、まったくゼロというわけではありませんが、大幅にコストダウンできる。
となると、その1枚!!!という写真が減ってくるのも事実。
下手な鉄砲~~じゃないですけど、何枚か撮っておこうと思うこともしばしば。
これを読んで「真剣な1枚を撮ってるんだけど」と言いたくなる気持ちも分かります。
職人気質だけが残る
デジタルになった手軽さがガンコ親父を作っているわけです。
昔は手間もコストもかかった。
すぐに失敗かどうかも判断できない。
失敗していたら撮り直しなので、その1枚にプレッシャーが掛かる。
だからといって、やみくもにシャッターを切るわけにはいかない。
今ある精一杯のリソースを、全力投球しないと自分が大変なことになる。
という時代に下積みしてきた人は、それが当たり前だと思ってしまうんですよね。
それは写真に限らず、多くのことに共通します。
とりあえず何とかなる時代
物撮りをしていて、小さなほこりが乗っていた場合。
フィルム時代であれば撮り直し、もしくはレタッチャーとよばれる職人さんへ修正を依頼する。
今の時代であれば、PhotoShopのようなレタッチソフトですぐに消える。
アシスタントでもアルバイトでも修正できるレベルだ。
この手軽さゆえに、「まぁあとで何とかなるわ」と思ってしまう。
確かに何とかなるけど、何とかならない時代を生きてきた人からすると、違和感があるのだろう。
例えばブログがリライトできるように
何とかなるのは、ブログも同じ。
リライトできるし画像の差し替えもできる。
納期だってギリギリでもいい。
そのくらい適当なものが、当たり前のように作れてしまう時代になったのだ。
後からいくらでも修正できるような環境がスタートの人には、ガタガタうるさいガンコ親父は邪魔な存在なのかもしれない。
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