ちゃんとやれ!

副業フリーランサーの飲み屋話

目の前にあるクリーニング屋さん

今の家に引っ越して、もうすぐ4年になる。

目の前にバス停があり、地下鉄の駅まで頻繁にバスが出ている。そのバスが向かう地下鉄の駅も1か所ではないところが、万が一のことを考えるとありがたい。

 

徒歩圏内にローソン、ファミリーマート、セブンイレブン、食料品も売っているドラッグストア。

もう少し歩けば和菓子屋さん、ケーキ屋さん、コメダ珈琲、ラーメン屋さん、定食屋さん。

 

家に帰ってご飯を食べて寝るだけ。

ただそれだけの生活をするなら、家の近所には充分すぎるほどのお店がある。

 

日用品はドラッグストアで買うことができるし、ゴハンにも困らない。

建物がちょっと古いだけで、コスパも抜群。いい物件を見つけた、と思っていた。

 

2019年末、自宅前のクリーニング屋さんが廃業してしまった。

コインランドリーやクリーニング屋さんがあることも、物件選びでは重要なポイント。

 

できればコインランドリーは24時間やっていてほしいし、クリーニング屋さんは遅くまで営業していてほしい。

幸いなことに、コインランドリーは300mほど離れたところにもあるので、困ることはなさそうだ。

問題はクリーニング屋さん。

次からはどこへワイシャツを出そうか。クリーニング屋さん難民になってしまった。

 

90代のおばあちゃんが受付をし、いつの間にか名前を憶えてくれるようになった。

昔ながらのレバーをガチャン!と動かすレジスターが特徴的だった。

 

奥のほうでは、天井からぶら下がっているアイロンでクリーニングの仕上げをしている職人さんが見える。

よくあるクリーニングの受付だけをやっているところではなく、自社仕上げだと聞いた。

 

しかもお値打ち、畳み仕上げでワイシャツ1枚150円。他所の半額くらいの印象だった。

サービスで取れかけていたボタンを付けてくれたり、なによりもお店の人と直にコミュニケーションをとれるのがよかった。

 

実家にいたころはスーパーの中にあるクリーニング屋さんを使っていた。

1日2回、クリーニング工場の人が集荷にくるタイプのお店。窓口の人は、ただの窓口の人だった。

そうじゃなくて、昔ながらのお店に出逢えたことは、ちょっと誇らしかったのだけど。

お店のシャッターに「ご愛顧ありがとうございました」の張り紙が貼ってある姿を見ると、ちょっと寂しくなってしまう。

週に1回、イベントでもらった大きな袋にワイシャツを詰めて道路を渡るのが習慣になっていた。

 

たまたま偶然、目の前にあった。それだけのご縁だったけれど、ここに住んでよかったな、なんて思ってしまった。

家を探すとき、家賃や間取り、専有面積などに気を取られてしまっていたのかもしれない。

駅やバス停、コンビニくらいは気にしているけれど。そんな温かいお店が近くにあったら、もっと価値があがるんじゃないのかな、なんて思ったりもした。

通っていたお店が無くなってしまうのは、それによる不便さよりも、心のよりどころが無くなってしまうほうがダメージが大きいみたいだ。

 

代替案はいくらでもあるし、なんなら服装規定が変わったのでワイシャツを着なくてもよい。だからといって、それだけで済む問題じゃないのだ。

 

何十年とやってきたお店を畳むときはどんな気持ちなんだろうか。

いろんな思いが交錯してしまった。

 

その建物も、来月には取り壊されるという。