技術やスキルをその断面だけで切り取って、できる・できない、と判断することはナンセンスだ。
その技術だけをクローズアップした狭義の「できる」は役に立たないのだ。
仕事で〇〇のスキルが必要だ!と言われても、そのスキル"だけ"で解決するわけではなく、特に〇〇のスキルがあるといい!程度のことなのだ。
例えば、事務職を募集している求人情報を見ると
「ワード・エクセル」
と書いてあることが多い。
ワードやエクセルが必要なのはよくわかるが、ワードやエクセルのスキル"だけ"あっても役に立たない。
それは来客対応や電話応対が必要だ、という話ではなく、ワードやエクセルが使えるだけでは、ワードやエクセルを使う業務において役に立たないのだ。
「議事録を作ってほしい」という依頼があったとき。
どれだけワードのスキルがあっても、会議内での会話をまとめる能力がなければ議事録を作れない。
「先月の売り上げをまとめてほしい」という依頼があったとき。
エクセルが使えるだけじゃダメなのだ。マクロやVBAのスキルがあったとしても。
何をもとに切り取ってまとめるか、考える必要がある。売り上げの金額なのか、個数なのか。曜日ごとに分けるのか、時間帯で区切るのか。
もちろんスキルがあるので、曜日ごとに分ける関数は知っているし、時間帯ごとにデータをまとめることはできる。
が、それを1から10まで指示を待っていてはいいパフォーマンスと認めてもらいづらい。
どれだけ運転がうまくても、道を覚えて接客もできないとタクシーの運転手になるのは難しい。
それは、どんなスキルでも同じことが言える。
そのスキル単品で活躍することなんて、まずないのだ。もしあるとすれば、プロダクトアウトとして通用する特殊なスキルだろう。
マーケットインで働いているうちは、そのスキルの裏に、同じくらいのレベルでいくつものスキルが必要になる。
相手の立場にたって考えられることや、誰にも負けないスピードや記憶力、幅広い知識など。
売りにするスキルがいくつもある中で、しいて言うならコレ!というものが必要になる。
大きな枠で「〇〇ができます」と考える人はいいが、小さな小さな穴を見つけて「〇〇ができます」なんて言うのはやめよう。
デザイナーは、ただデザインができればいいわけじゃない。
チラシを作るデザイナーなら、「これはチラシじゃないほうが訴求力がある」と考える必要があるし、提案することも時には重要だろう。
デザイン力だけでなく、マーケティング力も必要になる。
ピンポイントのそれで勝負するのではなく、手札はたくさんあるけれど、今ならコレ!というものを、ぜひ用意したいところだ。